その1「巻き取り紙」
オフセット輪転印刷とその下準備や後加工がどのように行われていくかを鹿沼オフ輪工場の内部紹介も兼ねて迫って行きたいと思います。皆様おつきあいの程よろしくお願いしますm(_ _)m
記念すべき第一回はまずこれがなくちゃ始まらない、「巻き取り紙」です。どなたか「トイレットペーパーのお化け」と例えていましたが、オフセット輪転印刷はペースターにこの”巻き取り紙”をセットすることから始まります。
巻き取り紙を輪転機で回転させて紙を流しながらどんどん印刷していくわけです。この巻き取り紙の大きさを知ってもらうべく、私(身長171㎝)が隣に立ってみると、腰以上の高さにまで巻き取られています。ちなみに重さは300㎏以上!!(紙質等により前後します) これ1本でB3チラシ2万枚前後を印刷することができます。
〈2016,4,26 投稿記事〉
その3「インフィード」
その2の動画の最後にもちょろっと出てきたインフィード、名前を聞いても「?」だと思います。
「送り込む」という意味を持つこの部分は、ペースターから流れてきた紙を19本ものローラーと内部にある「ウェブガイド」と呼ばれる機械、そして後に触れる「クーリング」との連携により、印刷部に紙が入る際のスピードや張り、位置を逐一調節して一定に保ってくれます。これがないと印刷が上下左右にブレたり紙にシワが寄ってしまったり最悪紙が切れてしまったり…オフセット輪転印刷には欠かせないありがた~い装置です。
〈2016,5,17 投稿記事〉
上記は「インフィード」だったわけですが、お隣にあるミヤコシ機にはここにちょっと…どころじゃない全く違ったものがあります。が、機能はインフィードと全く同じです。
それがこの「ダンサー」。動画は巻き取り紙同士が繋がったときのものです。まるでね〇~る君のようだネバ~!ちなみによぉ~く見るとその②で触れた「つなぎ目」が上下しつつ流れていくのが見えます。
〈2016,5,24 投稿記事〉
その4「紙質」
鹿沼オフ輪工場ではその紙質から大きく分けて3種類の紙を使用しています(一部例外もありますが)。
紙質の違いを写真でお見せして一目瞭然!と思ったのですが、いざ撮った写真見ても…よく分かんないなこれ…すいません…m(_ _)m
(ちなみに昨年の印刷工場見学会で使用したチラシです)
まずは「上質紙」。化学パルプのみで製造された「ザ・紙」ともいえるノーマルな紙です。ざらつきがあり、教科書等の書籍やノート・メモ帳・コピー用紙など日常で目にする機会の多い紙でもあります。
次に「コート紙」。上質紙に薬品を塗布しコーティングを施した紙です。チラシに使用する紙としては最もメジャーといえる光沢のある紙です。触るとツルツルしています。表面にざらつきがないためインキの乗りも良いです。
最後は「マットコート紙」。こちらも上質紙にコーティングを施した紙ですが、コート紙に比べて幾分マット(つや消し)でしっとりした質感です。とはいっても上質紙に比べると光沢等はあります。上質紙とコート紙の中間に位置する紙です。
簡単に説明しましたが、どの紙が良い、というのはありません。広告の性質に合わせて選ぶと良いかと思います。
(2016,6,15)
その6「インキ①」
印刷ができるまで、第6回はインキです。
紙はインフィードを抜けると4色のインキで印刷されていきます。1枚目の写真は上胴(裏面印刷)に使用するインキを入れる「インキツボ」、2枚目は下胴のイエローのインキツボです。インキツボに別室にあるインキドラムからパイピングという装置を使い各インキツボにインキを供給します。
この一般的なカラー印刷に使用する4色を総称して"CMYK"と言ったりしますが、実際はK(黒)→C(シアン・明るめの青)→M(マゼンタ・紫がかった赤)→Y(イエロー)の順で印刷していきます。これはインキの粘着性が強い順に並んでいて、インキが乾かない内に次のインキをのせる際、この「粘着性が強い順」が最も綺麗に印刷できるというわけです。
とここまで聞いて「?」と思った人もいるかもしれません。Kだけ日本語?このKはKuroやblacKではなく"Key plate"の略です。理論上は減法混色を基とした色の三原色であるCMYの掛け合わせで黒も再現できるはずなのですが、実際に印刷してみるとどうもパンチのある黒が出ないという経験から、画像の輪郭などを表現するために用いられた印刷板(これがKey plate)に黒のインキを別途使用した、というのが由来であります。
(2016,6,28)
その7「インキ②」
印刷ができるまで、第7回もインキです。
といっても前回とは内容は違います(当たり前か)。
鹿沼オフ輪工場の隅にあるインキ室です。ここには1本200㎏(!)のインキドラムたちが所狭しと並べられています。ここでパイピングシステムにセットされたインキドラムから各インキツボにインキが供給されていきます。
ドラムのラベルにはこのようなマークが印刷されています。エコマークの下にあるのは"VEGETABLE OIL INK"マーク。原料に大豆などの植物由来の油を使用した環境に優し~いインキです。
時にCMYKのプロセスカラー印刷が困難な色指定(特に単色印刷時)があります。そんな時に活躍するのが特色インキ(写真右)です。ちなみに「金赤」とは特色インキの中でもメジャーなインキで、マゼンタとイエローを1:1前後の割合で混ぜたもので赤と朱色の中間あたりの色です。
在庫の特色インキにもない色指定の場合にはオペレーターがインキを混ぜ合わせて色を作ることもあります。そんな時に使用することがあるのが右にある「メジューム」。これはインキと混ぜることでそのインキの色合いを薄めることができます。シアンに混ぜると水色に、マゼンタに混ぜるとピンクになります。
(2016,7,6)
その8「ローラー」
上銅・上部
上銅前
上銅・後ろ
下銅・前
下銅・後ろ
上銅・後ろ(カバー付)
印刷ユニット内にはたくさ~んのローラーがあります。
上胴に17本、下胴に18本のローラーが着いています。金属製のものとゴム製のものがあり、それぞれに役割があります。大きく分けると、「インキツボから適量のインキをローラー群に移す」「インキを練りこむ」「インキを平版に着ける」「水舟から水を版に移す」の4つ。色んなところから撮影したローラー、ご覧いただければと思います。
なお、印刷時にはこれらのローラーは当然高速回転しています。手を入れたりすると危ないのでしっかりカバーをしてあります。
(印刷中にカバーを開けると機械が自動で停止する仕組みになっています)
次回は「水」について。水なんて何に使うの?
(2016,7,13)
その9「水」
前回も話しましたが、ローラーの中には水を平版に移すものがあります。以前私の友人に印刷機の話をしたところ、「水使うの!?」と驚かれたことがあります。平版印刷は水と油の反発する性質を利用した印刷方法で、水がなければ印刷できません。
平版にインキと水の両方を供給することで必要な箇所にインキをのせ、必要な箇所以外にインキがのらないようにします。印刷に使用する水のことを「湿し水」といい、ユニット裏にある湿し水用のタンクで適温(鹿沼工場では10~12℃)に保ちつつ、各「水舟」へと供給されていきます。水舟からローラーで湿し水を適量移していき最後平版にうっっすら均一の水膜を張るように湿らせる、という構造になっています。
ちなみにこの湿し水、特殊な液体を混ぜ合わせて印刷向けにカスタマイズされています。pH5前後の酸性。飲んだことはないですが多分飲まないほうがいいです。
次回は前回からちょろちょろ顔を出している「平版」について。
(2016,7,20)
その10「平版(へいはん)」
K(黒)
C(シアン)
M(マゼンタ)
Y(イエロー)
今回でとうとう二桁回に突入!
その記念すべき第10回は「平版(へいはん)」です。
平版というと少々こそばゆいです。普段は「版」とだけ言っているので。印刷で「版」というと版画のように色のつく部分とつかない部分で凹凸があるのが普通ですが、これは凹凸はありません。だから「平版」。
写真は黒・シアン・マゼンタ・イエローそれぞれの平版です。材質はアルミです。見てもらうとと緑色の部分と白の部分があります。緑色が「画線部」と呼ばれる部分で、白が「非画線部」。親油性処理を施した画線部にインキがのり、親水性処理を施した非画線部には湿し水がのることによりインキがのらないようになります。前回、「平版印刷は水と油の反発する性質を利用した印刷方法」と書きましたが、平版の画線部と非画線部によりそれが分けられる、というお話でした。
次回は平版の画線部にある「ベタ」と「網点」について。
(2016,8,23)