その11「網点とベタ」
印刷ができるまで、第11回は「網点とベタ」です。
前回各色の平版をお見せしましたが、平版の画線部には薄いものと濃いものがあります。下の写真は25倍拡大のルーペで覗いたものです。薄いものは水玉模様状になっていて、この一つ一つの玉のことを「網点」といいます。濃いものはオール緑の状態で、これを「ベタ」といいます。画線部のそれぞれの色の濃さはこの網点の大きさで決まります。そして、その網点の大きさが最大の状態がベタとなります。
各色、そして太い(大きい)細い(小さい)網点を重ね合わせることで様々な色を表現することができます。写真やイラストはほぼ網点からなっているので、手元にルーペや虫めがねがある方は一度覗いてみるのもいいかもしれません(それほど倍率が高くなくても点々になっている感じは分かるかと思います)。
次回は平版がつくられる現場「刷版室」を覗いてみましょう。ここ実は管轄外なため中の人もよく分かってない…勉強させていただきます<(_ _*)>
(2016,8,31)
平版・網点
平版・ベタ
印刷物・網点の重なった状態
その12-1「刷版室①」
印刷ができるまで、第12回は「刷版室」です。
平版をデータに従いインキをのせる部分とのせない部分とに分ける作業を「版を焼く」「刷版(さっぱん)」といい、その作業をこの刷版室の刷版機で行います。
まずクライアント様から受け取ったデータをPhotoshopとIllustratorを使って処理、出力用のデータを作成します。出力用データを刷版用のソフトウェアを使って刷版機に送り、いよいよ刷版のスタートです。見た目画線部のみからなる平版を内部で赤外線レーザーを照射してインキをのせる部分のみ「露光」します(この露光のことを「焼く」といいます)。出てきた見た目何も変わっていない平版を今度は現像液の中に通します。これによって露光した部分以外の画線部は取り除かれ非画線部となります。これにて刷版終了!
という話をプリプレス課の人に教えていただきました。私全然分かってなかった…お世話になりました<(_ _*)>ペコリ
次回は刷版の工程の一部を動画で公開!超レア!中の人も初めて見た…。
(2016,9,7)
その12-2「刷版室②」
印刷ができるまで、第12回「刷版室」の続きです。
今回は刷版工程の一部を動画で公開。メインとなる「版を焼く(露光)」場面は機械上の関係で残念ながらお見せできないのですが、前回書いた「出てきた見た目何も変わっていない平版を今度は現像液の中に通します。これによって露光した部分以外の画線部は取り除かれ非画線部となります。」の部分をプリプレス課の人に撮っていただきました!中を洗浄して現像液を取り替えた直後でないと取り除かれた画線部により液体が緑色に変色してしまい平版が通る様子が見えなくなってしまうとのことです。超激レア!
この第12回はプリプレス課の人に大変お世話になりました。
この場を借りて御礼申し上げます<(_ _*)>ペコリ
次回は平版を巻き付ける「版胴」、そして「ブラン胴」について。
(2016,9,13)
その13「版胴とブラン胴」
K(墨)の下胴(表面)
K(墨)の上胴(裏面)
印刷ができるまで、第13回「版胴とブラン胴」です。
各色ユニットの上下についている版胴とブラン胴。刷版室で作成された平版を版胴に巻き付けることで印刷が可能になります。
平版の画線部にのったインキがブラン胴に転写し、それがさらに紙に転写されることで印刷されるという仕組みです。「印刷工場見学会」や「かっぱんだ」がブラン胴で逆さになっているのが分かるでしょうか。
ブラン胴に巻かれているブランケットはゴム製。上下両ブラン胴の間に紙を通し裏表両面を一度に印刷します。版と紙が直接触れないというのはオフセット印刷の大きな特徴です。
ちなみにブラン胴の両端にうっすら見える白い線、これは紙の両端が高速でブラン胴の間を通る際にかすかに削れ堆積したものです。
次回はとうとう「オフセット印刷理論」。これまでの印刷部の説明のおさらいであり総集編です。
(2016,10,5)
その14「平版オフセット印刷理論」
印刷ができるまで、第14回にしてとうとう「平版オフセット印刷理論」です。
これらの画像は今年の印刷工場見学会で各色印刷ユニットに貼られていたものです。
パイピングからインキつぼに溜まったインキがたくさんのローラーに練られながら版胴に移っていきます。その一方で湿し水も水舟からローラーを伝って版胴へ。平版に到達したインキは画線部に、湿し水は非画線部にのります。これでとちまるくんが印刷可能な状態になります。
平版の画線部にのったインキはブラン胴に転写され移ります。そしてブラン胴にのったインキは紙にさらに転写され移ります。ブラン胴でとちまるくんが一旦逆さになった後、紙に逆さの逆さで平版と同じ向きで印刷されます。これが表裏四色一気に行われ一瞬のうちに印刷が完了します。
"オフセット(off-set)"には「離して付ける」という意味があり、平版から一旦別のところ(ブランケット)に離した後、紙に付けるという間接性を表したものです。
次回は印刷部を離れドライヤーへ。ドライヤーといっても家庭にあるアレとは全く違うバカデカいものです。
(2016,10,18)
その15「ドライヤー」
印刷ができるまで、第15回は印刷部の後に待つ「ドライヤー」です。
紙に印刷されたインキ、当然そのままだとべとべとです。のでドライヤーで乾かしていきます。ドライヤーといっても皆様のご家庭にあるアレとは別物の、長さ4m、高さ2.5mあるドデカイものです。紙はこの中を高速で通過するわずかな時間(B4の紙なら最速で約0.78秒)に上下28本あるノズル(印刷中は蓋が閉まって通過中の紙とノズルは見えなくなります)から出る180℃前後の熱風にさらされ急速乾燥されます。オフセット輪転印刷では熱を加えると急速に乾燥するインキ「ヒートセットインキ」というものを使用しているので、この短い時間でも十分に乾きます。これにより後工程なく高速印刷が可能となります。
ちなみに、ノズルから出る熱風がドライヤー外に出ることはありませんが、ドライヤー本体からは僅かながら熱が滲み出てきます。この熱が暖房としての役割もしてくれちゃったりしてこれからの季節重宝します(夏は要冷房ですが…)。
次回はクーリング。ここには印刷をスムーズに進めるための様々な仕掛けが…。
(2016,10,26)
その16-1「クーリング①」
印刷ができるまで、第16回はクーリング。ここには様々な機能が備わっているので2回に分けて説明していきます。
ここの基本性能としては先に触れた「インフィード」と同じです。ドライヤーから流れてきた紙を15本ものローラーと内部にある「ウェブガイド」、「インフィード」との連携により、印刷部に紙が入る際のスピードや張り(「テンション」といいます)、位置を逐一調節して一定に保ってくれます(詳しくは下にリンクしてある「印刷ができるまで その3」をご覧下さい。文章を一部パクりました(笑))。
ですが、ここの機能はそれだけではありません。"cooling"の名の通り、ドライヤーで120℃近くにまでなった紙の温度を下げ、ヒートセットインキを固まらせる働きがあります。ドライヤーから出てきた直後にある3本の太いローラーの中には冷たい水が循環しています。この冷え冷えのローラー達に巻かれることよって紙とインキは一気に急速冷却されます。
次回はクーリングにくっついてる技あり装置たちをご紹介。
(2016,11,9)
その16-2「クーリング②」
印刷ができるまで第16回、クーリングの後編です。ここクーリング部に設置している技ありマシン達を紹介していきます。
まずは紙の端を照らす2つのライト。KCMY各色の平版はぴったり重なって(「見当が合う」といいます)印刷され続ける必要があります。印刷物の横端には必ず各色小さい「マーク」が印刷されていて、マークをこの装置で読み取ることによってそれを可能にしています(これについては後々詳しく触れていきます)。
次に白い液体の入った水槽。これは水に帯電防止剤を混ぜ合わせたものです。特にこれからの時期は紙が静電気によって揃わず出てくる現象が起こってきます。この水槽から紙に帯電防止剤を混ぜ合わせた水を薄~くのせることによりそれを抑えることができます。
そして最後はこの(3枚目の写真手前の)ローラー。「コンペンセータローラー」といって、そのすぐ後にあるセンサーで印刷物の位置を読み取り、それを基にこのローラーをこまめに上下動させることで印刷物が常に紙の中心に来るよう逐一調節してくれます(奥に上下動させるための装置も写っています)。
こうやって改めて書いてみると「よくできてるなぁ」と…。
次回から「排紙部」に入っていきます。印刷物完成の瞬間がいよいよ…。
(2016,11,16)
その17「排紙部」
折機部入口
シーター側入口
折機部出口
シーター側出口
印刷ができるまで第17回、「排紙部」に入っていきます。ここで印刷物が完成されて日の目を見ることとなります。
この機械では排紙部に2つのルートがあり、印刷物のサイズによって使い分けています。ひとつは排紙部下を通る二つ折りのB3やA3に使われる「折機部」、もうひとつは排紙部上を通る折らないB4やA4等に使われる「シーター部」。クラッチ操作と紙の通し直しで簡単にルートチェンジすることができます。
次回はその2つのルートから折機部を先にご紹介。秒速で折られまくって出てきまくります。
(2016,11,30)
その18「折機部」
印刷ができるまで第18回、排紙部の「折機部」を動画でご紹介。
B3やA3の印刷物を「折り出し」する折機部では、印刷速度と同じ速度で紙を切って折る必要があります。紙は折機部内の「断裁胴」「折胴」「咥(くわえ)胴」をそれぞれ通過して完成品となり排紙口に向かいます。
まず断裁胴にある「断裁刃」で紙に切れ目を入れ(動画ではあまり見えてない…ミシッという音が切れ目の入る音です)、切れ目のそばに折胴から出た10本の「針」を刺し、針で引っ張ることで紙が切り離されます(これも折胴の下の方で行われていて見えない…申し訳ない…)。折胴から出た「差し込みナイフ」で紙の真ん中を浮かせたところを咥胴の「咥板」で咥えて紙を排紙口に持っていくところで丁度針が引いて、最後に咥えも離れる。という一連の作業を流れるように行います。1分間にB3が600枚印刷できるこの機械、当然折り出しも1分間に600枚の速度で行われます。
それにしてもここ、書いて説明するのムズい…。
※普段ここは扉やカバーで覆われていて、それらを開けると機械が自動停止する仕様になっています
次回は排紙部もうひとつのルート、シーター部。
(2016,12,7)
その20-1「コントロールボックス①」
第20回は排紙部横に鎮座する「コントロールボックス」。その名の通り、基本ここで輪転機をコントロールしています。今回はその右半分をご紹介。
まず写真右下にあるボタン。これで輪転機のスタート・ストップをさせます。何らかの理由で急停止したい時には赤いボタンを。これはなるべく押したくないですね~。
ここからは各モニターの紹介。全てタッチパネルです。写真右上のモニターは、印刷速度や紙の張り(テンション)の管理、機械異常箇所表示、自動版付け、シリコン量調節、ブランケット洗浄など様々な業務を行います。
続いて写真左上。製版の方で各ジョブごとに色のデータを作成、それをここに入力することで、印刷開始(「刷り出し」と言います)時点で色味が見本に近い状態で始められます。ちなみにデータのやり取りは今時フロッピーディスク!
最後に写真左下。ここでインキと水の量を管理・調節します。インキはインキつぼのインキ元ローラー、水は水舟の水元ローラーの回転速度を速めたり遅くしたりすることでインキや水の量を全体的な量を増やしたり減らしたりします。
輪転機のコントロールはこれだけでは終わらない。次回は「コントロールボックス」の左半分をご紹介。
(2017,1,18)
その20-2「コントロールボックス②」
第20回「コントロールボックス」の後編・左半分を紹介していきます。
左半分、まずは写真左上のモニター。ここでドライヤーの各所温度を管理・調節します。ドライヤー内部が適温で燃焼しているか、紙面温度が高すぎたり低すぎたりしないか、異常はないかを見ることができます。
次に右下の12の緑の棒グラフ。各ユニット上下のインキつぼ内部には12の「つぼキー」と呼ばれるものが並んでついています。この棒グラフを上げると上げたラインのつぼキーが開きます。つぼキーが開くとキーとつぼローラーとの隙間が大きくなり、そこに流れるインキ量が多くなります。グラフを下げてキーを閉じるとつぼローラーとの隙間が小さくなりインキ量は減るわけです。この棒グラフの上げ下げによって各ラインのインキ量を調節し、印刷物を見本色に近づけていきます。
最後に左下のボタン群。これは「版見当」を合わせるのに使用します。4色×4色の平版がピッタリ合わさった状態で印刷する必要があり、それぞれの平版の位置をここで調整します。右側が自動で、左側が手動で動かす際に使用します。ここについては次回ガッツリとフィーチャーします。
というわけで輪転機の司令塔・コントロールボックスについての二週にわたっての説明、終了です<(_ _*)>
次回は「版見当」をガッツリとフィーチャー。
(2017,1,25)